森羅万象

1901 「トイトイ」 地福の小正月

昔から舶来好きの日本人。ヨーロッパを起源とする民俗行事のハロウィンに妙に張り切っている日本人もいます。 元々農耕民族の国であった日本には、ハロウィンよりも面白い たくさんの民族行事がありました。が、農業の衰えとともに、そんな行事が消え去ろうとしています。 一体それ何?のコンビニ的催しが増えて、地域固有の行事=文化が消えていきます。田舎を大切にしないと日本の文化は滅びます。

私は四国の松山市で育ちました。子供の頃には近所に田畑や農家があって、面白い行事がありました。関西で盛んだった「亥の子」 小学生の時に参加しました。


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これが 亥の子石 です。 これにロ-プを張って みんなで力を合わせて石を持ち上げて、地面に打ちつけると、地面に丸い穴が開きます。 この石を下げて町内の家々を回ります。その時唄うのは


おいべっさんという人は、
一で 俵(を)踏んばって
二で にっこり笑ろて
三で 酒造って
四つ 世の中良いように
五つ いつものごとくなり
六つ 無病の息災に
七つ 何事ないように
八つ 屋敷を建て広げ
九つ 小倉を建て並べ
十で とうとう納まった
この家 繁盛せぃ! この家 繁盛せぃ!!
 


です。歌い終わると 地面に穴があいて、その家の人から お菓子や蜜柑を貰っていました。今でもやっているでしょうか?

 「山口県の祭・行事」 (山口県教育委員会)に面白い行事が載っていました。小正月の1月14日に地福で行われる 「トイトイ」です。 前から一度は見たかった 「トイトイ」 に行ってきました。

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地福は山口市と津和野の間に拡がる 長楕円形の盆地の一角にある農村地帯です。 冬は雪も多く、寒暖の差が激しく、リンゴ園もあります。 しかし、国道9号線、JR山口線沿いの便利な場所で、 家から35分くらいで 「トイトイ」がある地福の市地区に到着。

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「市」地区のまん中辺りに 「TOi TOi」 と言う名前の小さな 道の駅風 の建物ができていました。トイトイは5時半からなので この建物に入って休んでいると 「トイトイですか? 子供達が集まる前に公民館に案内しますよ」 と親切な トイトイの責任者が現れ。 ご厚意に甘えて 公民館へ


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これが トイトイで使う 藁で作った人形 藁馬です。 年末から子供達や父兄が行事のために作りました。 藁馬が紙の馬になりかかった危機があったそうです。 やっぱり馬は藁でなくては!と 藁の扱いを 年より達が指導して、危機を乗り越えたそうです。

たてがみが長い馬、長すぎる馬、足が長い馬、大馬に小馬・・・・とそれぞれ個性的ですが、大きさは20cm~30cmくらいです。 

なぜ馬なのか?は不明です。農耕馬として農村地帯では親しい動物だったからか、神を乗せて運ぶ神聖な動物だったからか?

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5時半になってトイトイの主役の子供達が集まってきました。 市地区の幼稚園から中学生までの14名。 地元の人に聞いたら 地福の小学校には900人も児童が居た時代があったそうです。が、今はたったの20数名だそうです。 農村の少子化、寂しくなる化 はすごいもんです。

14人の子供は 3つの班に分かれ、付き添いの父兄と一緒に 57軒の家を回ります。藁馬は家の数だけ作ってあります。 緑の籠は 藁馬を入れる籠です。 袋の中には 藁馬が入っています。

なお、今日の見物人は テレビが2局、新聞が2つ、雑誌のルポライタ-が1名、トイトイを映像に記録してきた元校長先生とわたし の9名でした。


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空もすっかり暗くなった6時前に、市の公民館を出発。 上、中、下の 中班について回ることにしました。
張り切った子供達はテレビも来ていたのでニコニコ顔。 長年トイトイをやってきた中学生はク-ル顔で、そっと後輩達の後をついて歩いていきます。


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藁馬を入れた篭を、玄関や勝手口におきます。 そして、大きな声で 「といと~い」と叫びます。 その声を聞いた人は戸を開けて、篭の中の藁馬を取ります。そうして、お菓子を(の入った袋)を置きます。 家の人の姿が消えると、お菓子の回収にかかります。が、時にはご祝儀も入っています。 家の人が気がつくまで 「といと~い」 と叫びます。「あれっ この家の老夫婦は引っ越してしまったかぁ」 も何軒かありました。

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大事な事を忘れていました。 といと~い と叫んだら、姿を見られないように隠れなくてはいけません。隠れて 家の人を見張っています。

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お菓子の袋を抱えた子供達がヘッピリ腰になっています。時には水を掛けられからです。 水が飛んできたら大騒ぎで逃げます。

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笑ってる場合じゃないよ! おじさんの横には水が入ってピンクのバケツがあるよ! の家も 中班には2軒ありました。


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電気がついてるけど お留守かねぇ? お留守の家には 藁馬を置いて帰ります。なお、お菓子は後で届きます。

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5,6軒見たら、帰ろうと思っていましが 面白くなって最後まで一緒に廻り、また 公民館に帰ってきたら 7時になってました。 

道々 「面白いね」 「わくわくしますね」 と見物人の記者やルポライタ-の人と歩きました。 「今日は新月で暗いですね でも昔なら14日は 満月の前夜で明るかったでしょうね?」 
1年の長さは太陽の運行で決め、ひと月は月の満ち欠けで決めた 昔の暦。一見 不合理に思えますが、 灯りが無くて暗かった昔は天然の明るさに従って生活。 だから、小正月の14日は、外は明るく歩きやすい  昔の人は偉いですね。


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掛け声の 「といとい」 の意味や、どんな字を書くのかは記録が全く残っていないので、分かっていません。「お爺さんの時代からあったし、そのお爺さんさんが江戸時代もやっていたと言っていました」 少なくとも江戸時代にはあった行事のようです。

「トイトイ」または「トヘトヘ」 行事は かつては山口県で広く行われていたそうですが、今は地福でしか行われていません。

「小正月の夜にあること。子供達が主役である。縁起物や農耕に関わる物(藁馬)を家々にもたらすこと。また、子供達の来訪が幸いをもたらすと意識されていること。などから、トイトイは 一年の節目である小正月の夜に、来訪者(来訪神)がその年の幸いを与えるために来臨するという典型的な小正月の行事である」 -山口県の祭・行事

「といとい」という掛け声が と~い と~い なのか といとい なのか といっといっ なのか 前から気にかかっていましたが、本物を見たので安心した地福のトイトイ 面白かったです。



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by ab300211 | 2013-01-15 01:26 | 風景